博物館のあるグミュンドゥはオーストリアのシュピタル・アン・デア・ドラウ郡にある小さな町。「博物館」とはいえ、戦後オーストリアに戻ったポルシェが自動車生産を始めた小さな工場を改装したものらしい。小さな博物館にはエンジンの匂いが充満し、展示品が所狭しと並べられている。シュトゥットゥガルトゥのものに比べるとかなり貧相ではあるかもしれないけど、政治やお金に縁のなかったという技術者肌のポルシェ(一代目)を象徴しているようで、なかなか印象的だった。
 ポルシェと聞くとレーシング・カーのイメージしかなかったんだけど、創業者であるボヘミア出身の天才的技術者Ferdinand Porscheフェルディナンド・ポルシェは20世紀ドイツの産業史あるいは技術史の主役の1人といってもよいくらいだ。フェルディナンドは1875年にブリキ職人の次男として生まれ、幼い頃から機械工学に興味を示したらしい。25歳になった1900年にはパリ万博に電気自動車を出品しグランプリに。車輪のハブにモーターを付けたもので、現在のハイブリッドカーの仕組みに似ているらしい。1920年代にはダイムラー・ベンツでレーシングカー設計に携わり、33年にはヒトラーの支援を受け、フォルクワーゲン・ビートルを設計。ソ連を訪問した際にはスターリンから「お抱え技術者」として相当の条件を提示されたものの、言葉の壁を理由に断ったそうだ。戦後は戦争協力者として服役。47年にポルシェ社を設立し、51年に死去。息子Ferryフェリも技術者ではあったけれど、父親よりは政治や経営にその手腕を発揮したようだ。
 博物館には車以外に農業機械なども少し展示されていて面白かった。
gmund
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(フェルディナンドが設計し、農作物の運搬などに使用されたロープウェイのようなもの)